「・・・え?」
「菜落さんのロッカーに、あったの」
「え・・・どういう・・・」
「今日、学校に行ったとき、見つけたの。わたし、勝手に読んじゃって。でも・・・これ、読んでるうちに、なんかね、」
田岡の目を、まっすぐ見つめる。
「田岡の、話じゃないかと、思ったんだ」
主人公の男の子。
足をなくした男の子。
事故で十分に走れなくなった、田岡のための。野球部を、やめざるをえなかった田岡のための、話じゃないかと、思ったんだ。
星の馬は、希望。
つらい世界に、菜落ミノリは、希望を与えたかった。田岡が、話のなかだけでも、走り回れるように。
そうじゃないのかな。
田岡が菜落ミノリを好きになった瞬間。
菜落ミノリのなかにも、きっと、なにかが芽生えてたんだ。
田岡の瞳が、一瞬ゆれた。
夜に浮かぶ素肌に、鳥肌がたつ。寒くないのに。
くちびるがふるえたまま、わたしは、話し続ける。
田岡、わたし、まだ、聞いてほしいことがあるんだ。