「そしたら、ある晩ね。お悩みコーナーのところで、一枚のハガキが読まれたのね。ジュ・・・ジュウエンムイチ、って、ペンネームだった。そのときわたし、すごくおどろいたんだ」
言葉が、のどにつまる。
がんばれ。がんばれ。ニハシノコが、わたしをはげましている。
「田岡の、サブバックの名前だって、思ったの。そんな名前、考えつく人ほかにいないって、そう思った。だから、だから、わたし・・・知ってた。田岡に聞くまえから、田岡に好きな子がいること。田岡が・・・菜落さんを好きなんじゃないかってこと」
足下には、白いところをのこしたままの、円のなかみ。
顔を上げる。目があった。
田岡は、あっけにとられたような顔をしていた。
でも、だんだん、なにかがつながったような顔に、変わっていって。
「・・・・・・そっか」
田岡は、ちいさな声で、つぶやいた。
「・・・すごいな。すごい偶然っつか、よく気づいたな、それ」
「・・・・・・うん」
「・・・そっか。そうだったんだ」
田岡は、そっか、と繰り返して言った。