だまって、見ていた。

田岡が、できたばかりの顔に、線を引く。そして、その中身を、残すところなく塗りつぶしていく。

もうすぐで、白丸が黒丸になる。


全部塗り終えてしまう前に、言おう。

わたしは、大きく息をすった。


「・・・田岡、あの」


たくさんためてから、やっと吐きだした言葉は、思ったより、わたしの心をゆさぶった。


「うん?」

「あの・・・うまく言えないかもしれないけど、聞いてくれる?」


思っているだけなら平気なのに、言葉にして出すと、気持ちがこみあげて、泣いてしまいそうになる。


だめだ。ふるえるな。

足下の、しおれたサブバック。ニハシノコが、心配そうに、わたしを見つめている。

言うって、決めたんだ。これは、ただのわたしの自己満足かもしれないけれど。


「・・・わたし、も」

「え?」

「わたしも・・・その、田岡が聴いてたっていうラジオ、聴いてたの。中一のころから、ずっと」


田岡の顔を、見ることができない。

視界にうつる、田岡の足が、動きを止めている。