「どしたの、三橋」


月曜日。

塾の終わりに呼び出したのは、今度はわたしのほうだった。

花火の公園。

ブランコをゆらして待っていたわたしのところに、息を切らして、田岡がやってくる。


「・・・よお、田岡」

「よっ、三橋。てかおまえ、こわいぞ。外から見たら、一瞬オバケがいるのかと思った」

「失礼な」

「ははっ、だって三橋、今日白いから」


田岡が笑って、となりのブランコにすわる。

この前の夜とは、位置が逆だ。

オバケあつかいされた白いワンピースのすそを、パタパタとあおる。

なまぬるい風が、太ももにまとわりついた。


「・・・元気に、してた?」

「あー・・・うーん。三橋は?」

「ヒマすぎて死にそう」

「ははっ、たしかにヒマだよなぁ!あ、そうそう!ずっと聴いてた、夜のラジオ放送も、なくなっちまってさー」


田岡の明るい声。きゅっと、ブランコの鎖をにぎる。


「そう・・・なんだ」


なにげない会話をしながら、わたしは、心の準備をしていた。