クラスでひとり、立ち上がったままの嶋田さんの顔は、真っ赤になっていた。
恥ずかしさで、嶋田さんのにぎりこぶしが、すこしふるえていた。
・・・そのときだった。
先生が、嶋田さんのななめ後ろの、女子生徒を当てた。
それが、菜落ミノリだった。
「78です」
菜落ミノリは、じつにアッサリと、答えた。
その答えは、正しかった。先生からさすがだと言われても、菜落ミノリは反応うすく、教科書に視線を戻しただけだった。
きっと、それが、いけなかった。
そこでの正解は、「わかりません」って答えることだった。もしくは、78じゃなくて、せめて「87です」とでも、逆にして言うことだった。
菜落ミノリが、悪いわけじゃない。どちらかと言えば、悪いのは授業中に携帯なんかいじってた、嶋田さんだ。
でも、クラスのてっぺんにいるニンゲンのプライドを傷つけることは、中学生のわたしたちが一番してはいけないこと。それ、暗黙のリョーカイ。
あー、やばいな。そう思っていたけれど、案の定。
その授業が終わったあと、嶋田さんが目を真っ赤にして、派手グループの女子たちに言っていた。
「・・・今度正解しやがったら、コロしてやる」