夏は、いつのまに、始まっていたんだろう。
わからない。
そしてわからないまま、夏は、いつのまにか、終わっていくんだ。
攻撃をゆるめる太陽。ほどよい温度になる、地面。
セミは包囲をやめて、パサパサの死がいになって、道路によこたわる。
夏休み明けには学校に行くと、きのう、先生と約束した。
夏休み明けにも、実力テストがある。
だから、たぶんするべきことは、たくさんある。
たくさん考えなければいけないこともあるけれど、向き合う時間は、十分にあるんだ。
階段を上がる。
二階に差し掛かったとき、窓から、体育館が見えた。
上窓も下窓も開いている。最大の換気。やっぱり今日は、試合にむけてバスケ部も活動しているのかもしれない。
そう思ったら、きこえてくる気がした。
はじける、ドリブルの音。
キュッと、バッシュがこすれる音。
流れる汗は、大量なのに、なぜかすがすがしくて。
「ファイッ、オー!!」
体育館いっぱいにひびく、アキの大きなかけ声を、思い出す。
バスケに関してはいつだって、全力投球のアキ。かけ声も、走るのも、いつだってめいいっぱい。
あざやかなドリブルを思い出し、体の奥がうずいた。