何日かぶりの学校は、思ったより、たくさんの声でにぎわっていた。
ガランとした雰囲気を予想していたから、おどろく。日曜日で、休みの部活が多いはずなのに。
もしかすると、試合が近いからだろうか。
夏休みに入ってすぐ試合があるのは、バスケ部だけじゃない。運動部はたいてい、夏季の試合というものがあるから。
だれにも見られないうちにと、早足でゲタバコへ向かい、靴をはきかえる。
さすがに校舎のなかは、とても静かだ。
いたとしても、吹奏楽部の部員か、先生数人くらいだろう。まずい人に出会うことはない。
廊下を歩く。
靴底に入ってくる感覚が、なんだか新鮮。
道路のコンクリートや家のフローリングよりもやわらかい、廊下のかたさ。
ペタン、ペタンと鳴る。わたしの動きに、寄りそう足音。
セミの声が、きこえる。四方八方から。
学校が、セミの大群に包囲されてしまったみたい。
上からは太陽。下からは、熱された地面。
まわりはセミに囲まれて、わたしたちは、捕まった囚人みたい。