バラバラになった心が、手足が、集まって、くっつきはじめる。

ゆっくりと、口を開いた。

漏れ出る、空気がふるえる。


お母さん。あのね。


「・・・わたし・・・、許せなかったの」


はじめて、わたしが嶋田さんにつっかかった事件のことを、自分から口にした。

言葉にすることから、逃げていた。

こわかったから。認めてしまったら、世界をまるごと敵に回してしまうような、気がしていたから。

暴力で傷つけてもいいなんて、力で押し込めればいいなんて、すこしも思ってないよ。

でも、それでも。


「どうしても、許せなかったの・・・っ」


ハッと顔をあげて、お母さんは、わたしを見た。

お母さんの顔は、涙でボロボロにくずれていた。

罪悪感と、悔しいのと、田岡から聞いた言葉と。一気に全部がこみあげてきて、まぜこぜになって、わたしも泣けてきた。

声を上げて、泣いた。


ずっと、イライラしていた。モヤモヤしていた。キシキシしていた。怒っていた。はねのけていた。


でも、ああ、そうか。


本当は、わたし、ずっと、泣きたかったんだ。