寝返りを打って、お母さんのほうを見た。
あれだけたくさんあった洗濯物は、全部たたみ終えられていた。
お母さんの鼻が、グズッと鳴った。
顔は見えないけれど、泣いているのだと思った。
お母さんは、きれいにたたまれた洗濯物をまたひらいて、ゆっくり、シワを伸ばし始める。
そうしてまでも、お母さんは、わたしの部屋にいようとしていた。
その背中が、なんだかとても、ちいさくみえた。
「・・・・・・おかあさん、」
呼びかけてしまったら、目の奥に、熱いものがこみ上げてきた。
ごめんって、思った。
その背中は、たぶん、わたしの言葉が、けずってしまったんだと思った。
はじめて、美術で彫刻刀を使ったときのことを、思い出す。緊張して、うすく、そうっと、ゆっくり力を入れて、木目にそって、けずった。
そのときよりも、わたしはきっと、深く雑に、お母さんをけずってしまったんだ。
なのにお母さんは、まだここにいる。
どうしようもない、わたしのとなりにいようとする。