セミの声で、目をさました。
Tシャツと素肌が、汗のせいで、異様になじんでいる。
変な夢をみていた。ハッキリと覚えていないけれど、あたり一面、血のように赤い夢だった。
背中がつめたい。でも今、目にうつるのは、朝をむかえた自分の部屋。
なじみのある水色のコンポに、ホッと息をつく。
『夢、みるんだ。皮膚の裏と表が、入れ替わった自分を』
・・・昨晩、田岡から、あんな話を聞いたからだろうか。
家に帰ってからも、眠る前も、田岡のことばかり考えていた。何度も、何度も寝返りをうって。たくさん、たくさん考えて。
なにかしたい。
それは、自然にわき上がってきた思いだった。
泣きそうに笑う。情けないだろって笑う。
そんな田岡を思い出したら、はがゆさでいっぱいになって、しかたなかった。
田岡のために、わたしができることはなんだろう。
なにか、ないの。田岡のために。
田岡のため?…わたしのため?
ベッドから起き上がる。床に、ヒタリと、吸盤のように足の裏がくっついた。
そうかもしれない、と思った。
わたしは、わたしのために、ジュウエンムイチの行方を、見届けたいのかもしれない。
知りたかった。
だれかがだれかを好きになる、その結末を。