ブランコがゆれるたび、靴底が、けずれる音がする。それは、心が削られる音にも、きっと似ている。


田岡が、ジュウエンムイチであること。


それが証明できたら、もっと、すがすがしい気持ちになるかと思っていた。

でも、そうじゃなかった。


すがすがしい、とはちっとも似ていない。この気持ちの名前を、わたしは知らなかった。

こみあげる青。切ないって、こういうこと?


「・・・おれ、春休みにさ。事故、合っただろ」


緊張を残したままの声で、田岡は続けた。

返事をできないかわりに、わたしはかぶりを大きく振る。


「しばらく学校休んでて、 そんで、新学期なってから、最初の登校日。集まってきてくれるやつ、声かけてくれるやつ、けっこういてさ。二組の前、通りかかったときも、田岡って、呼ばれて」

「・・・・・・」

「そんで、事故のこと聞かれたから、軽くな。説明したんだよ。その場に、偶然、菜落もいてさ」

「・・・・・・」

「おれも、面白おかしく話したんだけど。まあ、聞いたヤツら、みんな、笑ってて。『不死身だもんなおまえ』『頭打って、かしこくなったほうが、よかったんじゃね?』とか言われて、おれも、な。うん、だよなーって、笑って、返してたんだけど」