とばした靴が、ひっくり返っていたら、明日は雨で、そのまま表を向いていたら、晴れ。

雨だったら、晴れになるまで、何回も繰り返した。

繰り返すことが、許されていた、無邪気なころ。


「・・・あのさ」


心臓のドクドクをおさえるために、幼いころの空想にふけっていたら、 となりに、田岡の声が落ちた。


「・・・嶋田。殴ったって、聞いた」


ブランコをゆらす。キィ、とさびた鎖の音がする。

口を開いて、息を吸った。

またひっくり返らないように、今度はちゃんと準備して、言葉をつむぐ。


「殴っては、ないよ。突き飛ばして、油性ペンで顔に線は引いたけど」

「・・・ははっ、すげぇな」


田岡が、息を漏らすように笑った。

ここで、四人で花火をしたときの笑い声とは、ちがうものだった。


あのときの大きな笑い声は打ち上げ花火で、今は、はかない線香花火。そんなかんじだ。

四人で、風よけしながら線香花火をしたのが、もうずいぶん昔に感じてしまう。

大切にされた、濃いオレンジの四つの玉は、もう、ここにはない。