かぁっと、のどの奥が熱くなる。
かなり恥ずかしい。最近、あんまり口を動かす機会がなかったからだ。
でも多分、顔が赤くなっていても、夜の黒に、かくれているから。
振り返った田岡の顔が、ほころんだ。
「・・・三橋」
暗かったけれど、それはわかった。
「来た。よかった」
「・・・べつに、来るよ」
「塾も、来ねーかもって、思ってた」
「・・・来るよ、月謝、払ってんだし」
「はは、そだな。親、平気?厳しいんだろ」
「ん、大丈夫」
とても、変なかんじだ。
塾では一言も話さなかったのに、二人になると、こうやって話す。
二人のときの田岡は、みんなのなかにいるときと違って、声のトーンが落ち着いている。
でもそれは、逆にわたしを、落ち着かなくさせていた。
自然さを意識しながら、田岡のとなりのブランコに、腰を下ろす。
ゆれる、不安定な座面。わたしの今の 気持ちと、おんなじ。
ここしばらく、ブランコなんてのった記憶がない。
小学生のころは、よく限界までこいで、靴とばしなんかしていたけれど。