ゆっくり、できるだけゆっくり、テキストをしまって。
わざと一本一本、フデバコにペンを戻して。時間をかけてから、公園にむかった。
塾を出たのは、わたしが一番最後。
もしあのメールがホンモノなら、田岡はもう、公園にいるはずだ。
花火の印象が残っていたせいか、近づく公園は、前よりもずっと、暗くみえた。
足を踏み入れると、ジャリ、と、砂のなる音。
ジャリ、ジャリ。ひかえめな音を立てながら、顔 を上げて、あたりを見渡す。
不安な気持ちが、強かった。
「・・・・・・あっ」
そして、目に写り込んだものに、やっと肩の力が抜ける。
ホッとしたのと、ドキリとしたの。
塾に入ったときと同じ感情が、心のなかに生まれる。
見つけた。ブランコの上に座っている、すこし丸まった背中。
丸文字の、英語のロゴが入ったTシャツ。
田岡だった。
ちゃんと、あのメールは、田岡が送ったものだった。
「・・・田岡っ 」
呼びかけたら、声がひっくり返ってしまった。