──塾には、嶋田脚本キャストたちはいない。


いろいろ考えた結果。それが、わたしを外出させる決め手だったんだと思う。


塾がはじまる夕方までをベッドのうえですごしたわたしは、一階におりて、顔を洗った。

冷水。目が、ひさしぶりに、本来のサイズに開いた気がする。

わたしを見つめる、鏡のなかのわたしは、ぼんやり、つかみどころのない顔をしていた。


数日前と比べて、ずいぶん生気が抜け落ちたような顔を引き連れて、家を出る。

お母さんがなにか言いながら玄関に駆けてきたけれど、振り返らずに、そのまま玄関を去った。

塾用のカバンを持っているから、行き先はわかっただろう。



歩いて着いた塾には、もうほとんど、いつものメンバーがそろっていた。

うつむき気味でとびらを開けた瞬間、飛び出してきたのは、にぎやかな声。


「はー!?お前なにやってんの!?それ、おれの炭酸!!」

「え?やーわりーわりー。振って飲むやつかと思って」

「絶対わざとだろお前!!」


ペットボトルをシャカシャカ振っているのは、田岡だった。