あれから、柏木くんに迫られるようなことはなく、ひたすら文化祭に向けて準備をする日々が続いた。
「桜さん!そっち色塗れた?」
「あっ、はい!ついでにこっちもやっておきました、水色でよかったですよね?」
「うん!ありがと、助かったー!」
あ……。
“ありがとう”
“助かった”
最近、こんなふうに言ってもらうことが増えたような気がする。
私なんかでも役に立てている、そう実感できて嬉しかった。
「じゃあ昼休憩とるよー。午後からまた働いてもらうから、しっかり食べておきなさい」
野川先輩は午後の予定をざっと説明する。
それから「解散」という声がかかると、それぞれ休憩にはいった。
「香波、すごいじゃん最近」
「え?」
人が少なくなった教室の隅っこでお弁当を広げていると、相沢くんが隣にやってきた。
相沢くんのスペースを確保するため、慌てて広げていた荷物を片付ける。
すると頭上から「いいよ、適当に座るから」と言われ、笑われてしまった。