やっと掃除が終わり、頼まれた日直の仕事を片付けている時だった。



「――あれ?まだいたの?」



私以外誰もいないはずの教室で声が響いた。


思わずびくりとして、その拍子に手からシャープペンシルが滑り落ちてしまった。


私の席に歩み寄り、落ちたそれを拾ってくれたのは、同じクラスの――。



「あああ相沢くんっ!?」



相沢浩也(あいざわ ひろや)。
学校でも有名なサボり魔で、いわゆる不良生徒と呼ばれているうちのひとり。


私みたいな人間が関わっていい人じゃない!



「はい。これ」



とは思っても、クールな低い声と共にシャーペンが差し出される。
慌てて受け取ると、今度は机の上の日誌を覗き込まれた。


「今日、桜さん日直だったっけ?」


「えっ……あの……」



――“桜さん”



私の名前……。