どうしたんだろう?柏木くん……。
もしかして、この前中庭で、柏木くんと野川先輩が話してたことに何か関係があるのだろうか。
「……ん?香波ちゃん、何?」
「へっ!?」
じーっと見てしまっていたのか、柏木くんが私の視線に気付いてこっちを振り向いた。
「どうしたの?俺の顔になんかついてる?」
「あ、いえ!何でもないです」
「そう?」と言って柏木くんは笑ったけど、その笑顔はやっぱりどこか寂しそうというか切ない雰囲気をまとわせていた。
「じゃあ、一年生は、ミスコンとミスターコンの会場の飾り付けを行ってください」
野川先輩の指示を受けて、私はコンテストのステージがある場所へと歩き出す。
「香波?何ぼんやりしてんだ、行くぞ」
「あ、相沢くんっ」
この前のあの日、夕暮れ時の教室での出来事を思い出して、顔が熱くなる。
「早く文実委員のほうを終わらせて、クラスのほうに戻るぞ」
「あ、はい。そうですね」
ドキドキしてるのがバレないようにできるだけ平静を装う私。
隣を並んで歩くことなんて今までも普通にあったのに、あんなことがあったあとでは恥ずかしくなる。