玄関に着き、走ったことで上がった息を整える。


ある程度落ち着いてから、ローファーに履き替えていると、ふと中庭に人がいるのが見えた。


こんな時間に……と不思議に思いながらなんとなく様子を伺うと。


「あれ?柏木くん……と、野川先輩……?」


意外な組み合わせの2人だった。
あまり文実委員でも話したりしてるイメージはないのに。


それなのに、何やら言い争っているみたいで、ただならぬ雰囲気を感じる。


しかも野川先輩は今にも泣きそうな顔をしているし、柏木くんも怒っているような必死な表情を浮かべている。


何を話しているんだろう。
喧嘩?大丈夫なのかな……?


しばらくすると、柏木くんが一方的にその場を立ち去ってしまった。


気にはなったけど、私なんかが立ち入る問題ではないと思うし、そのあとすぐ野川先輩もどこかに行ってしまったので、私もそのまま学校を出た。


柏木くんたち、何かあったのかな。
文化祭のことかな。


それとも……。


何故か相沢くんの顔が頭に思い浮かぶ。


相沢くんには申し訳ないけど、野川先輩が泣いていた理由に相沢くんが関係しているような気がしてならない。


だとしたら、柏木くんが怒ってたのはどうして……。


考えても答えは見つからない。


だから私は、迫り来る文化祭のことだけを考えることにした。


相沢くんのことも、文化祭が無事に成功してから、私の方からきちんと伝えるって決めたんだから……。