「スカートの長さは膝丈ぐらいがベストだと思いまーす!んで、フリルたっぷり付けたい!」
挙手をしながら、真っ先にアキちゃんがアイデアを出してくれた。
それから、皆も釣られるように次々と意見が飛び出してくる。
「リボン!リボンつけたい!」
「髪もカツラだけじゃなくてヘッドドレスとか!」
わいわいと盛り上がってきた衣装係。
アキちゃんのおかげでもあるけど、この私がしっかりと指示を出せたことに感激してしまう。
「桜さん、あたし絵描くの得意だから、皆の意見を参考にデザイン描いてこようか?」
そう言ってきてくれたのは、美術部の女の子の藤崎さん。そして、一番最初に私に掃除やら雑用やらを頼んできた人でもある。
「えっ!? いいんですか……?」
「うん。もちろんだよ」
恐る恐る問いかけると、藤崎さんはにこっと笑って頷いてくれた。
そして、さらに思いがけないことを口にした。
「桜さん、今までいろんなこと押し付けちゃってごめんね。だから今度は、私が頼まれる番!絵は誰にも負けないつもりだから任せてよ!」
「ふ、藤崎さん……!」
藤崎さんが謝ることなんてない。私が断れなかったからいけないの。
でも、そんなふうに言ってくれたことがすごく嬉しくて。
「ありがとうございます……!よろしくお願いします!」
涙をこらえて言えたのはそれだけだった。
目頭を押さえながら、ふと隣の美術係のほうに視線をうつすと、ちょうど相沢くんと目が合った。
相沢くんはさっきの私たちを見ていたのか、優しく微笑む。声は聞こえなかったけど確かに口元が“よかったな”と言ってくれたような気がした。
だから私も、にっこり笑って大きく頷いた。