*   *   *

高級住宅地の一角。ここら一帯は綺麗な家が立ち並んでいる。
その中でも、“原”という表札がたつ家は他の住宅よりも大きくて綺麗で、ひときわ目立っていた。

この辺は、いつもは基本的静かで落ち着いた雰囲気があるのだが、今日は違った。
たくさんのスーツ姿の男が家を守るように張り込んでいて、その付近では、通行人ひとりひとりに、とある少女の写真を見せながら何やら質問を投げ掛けていた。

一人のスーツの男が手帳を見せ、家の中へと入った。
「失礼します!」
リビングへと駆け込む。
「警部、原千夏さんは学校帰りに襲われた模様です。途中までは一緒に帰っていたと、彼女の友人から証言を得ました」
「本当か!?」
「はい。恐らくひとりになったところを狙われたのだと思われます」
そう、ここは千夏の家。
娘がさらわれ、身代金を要求されたと、両親から通報があり、警察が動いたのである。

報告しに来た刑事は敬礼をすると、再び付近の情報収集及び、千夏の交流関係をあらいにいった。

報告を受けた警部は、ソファーで頭を抱える千夏の両親に声をかけた。
「お父さん、お母さん、その後犯人から連絡は?」
「いいえ…5000万用意しろと言われてからは一度も…」
首を横に振る母親。
「千夏…」
愛する娘が無事である事を、父親は祈るしかなかった。