「待ち合わせ場所、どこ?」
「私達が二日間過ごしたあの倉庫!」
やっと準備ができた千夏を送ろうと、美和は車のキーを持った。

「千夏、行くよ」
「あ、ちょっと待って!」
千夏は大事な事を思い出し、リビングに戻る。
「行ってくるね、光ちゃん」
リビングにある棚には、美和と遥が持っていた光の写真が飾られている。
千夏が光にきちんと手を合わせているのを見て、美和の瞳が少し潤んだ。

「お母さん、行こっ」
「はいはい」

 *   *   *

遥が倉庫に着くと、そこにはまだ誰もいなかった。
「千夏はまだか…」
適当な場所に腰をおろして、しばらく待つことにした。

この一年間、変わったことといえば自分の髪が伸びたことくらい。
1年は意外と短かった。

でも千夏は、寂しかったのかな…?
デートを懇願した千夏を思い出す。自分の事を相当想ってくれているんだと感じた。

「遥さん!!」
倉庫に響いた高い声。
誰だか一発でわかったが、体が反射的に振り返る。
「千夏っ…!」
駆け寄ってくると同時に、千夏は遥に抱きついた。
「おかえり、遥さん」
「ただいま、千夏」

抱き締め返し、頭を撫でると千夏は突然泣きだした。
「会いたかったです…っ!」
「あーはいはい、わかったから泣くなって」
涙を指で拭う遥は、突然言葉を失う。
千夏が大人に見えた。一年前、ここで抱き締めた時よりもずっと、“女”に近づいている。
やっぱり1年って…結構長いかもしんねぇ…。

「はる──…!」

気付くと遥は、千夏の唇を奪っていた──。