美和は恵介と離婚した。もちろん、恵介の実刑は遥よりも重く、今も服役している。

「俺、出所したらちゃんと働いて前みたいに母さんにつらい思いはさせないから、恵介さんとは縁切ってほしい。千夏と母さんには悪いけど、俺の父親は父さんだけなんだ」
そう言って、少し申し訳なさそうに頭を下げた遥。
美和が「出所したら皆で一緒に暮らしましょう」と提案すると、彼はこんな条件を出したのだ。
当然だと美和は思う。美和も遥が帰ってくるまでに、離婚の手続きを済ませる予定だった。

「わかってるわよ。恵介とはちゃんと別れるつもりよ。第一、私だって光を殺した人と一緒にいたくないしね」
美和が笑うと、遥は「ありがと」と優しく微笑んだ。


 *   *   *

「お母さん!今、何時!?」
「もうすぐで約束の時間よ」
「うぇえ!?やばいよぉ〜〜!!」
バタバタと走り回る千夏。

今日は遥が出所する日。
遥とは服役中も何度か面会した。それでも寂しかった千夏は、“出所したらすぐデート”なんていうお願いをした。
普通は出所したらまず、家族皆と団らんを楽しむものなのだが、千夏が「大好きなのに、初デートが1年もお預けされた私の気持ちも考えてよ〜!」と泣き喚いたおかげで、美和は承諾せざるを得なかった。
遥も嬉しそうに「いいよ」と笑って言ってくれた。

だというのに……
「うわ──ん!寝坊した──!!」
昨夜はワクワクしてなかなか眠れず、待ち合わせ時間の10分前に起きてしまった。