千夏と美和のおかげで、遥にくだされた実刑は異例の懲役1年。
つらい幼少期にたまったストレスが爆発し、精神状態が不安定だった。怒りと憎しみに支配され、冷静な判断ができなかったということで今回の罪は軽くなった。
それに加えて

「私は監禁されてたなんて思いません。彼は十分な食事を与えてくれ、はじめは柱に縛り付けていた鎖もすぐにはずして、自由にしてくれました。私が逃げようとしなかっただけです」

千夏のこの証言が、罪の軽減に大きく貢献したのだ。

監禁中の二日間に生まれた、犯人と被害者の素晴らしき愛──マスコミはそんな風に騒ぎ立て、遥と千夏のことを大きく取り上げた。
未成年である千夏の顔や名前は、もちろん出してはいない。20歳の遥も、彼の人権と今後の生活を尊重し、個人情報は完全にふせた上で、ドラマのような2人の愛をとりあげた。

世間では、信じる人と信じない人…また犯人に惚れるなどありえないと批判する者や、逆に素敵だと憧れる者もいた。国民の意見は、千差万別だった。

そして、一年後──。