*   *   *

「単刀直入に言う」
「はい…」
遥の真剣な瞳に吸い込まれそうになる。
どんな話であろうと、受け入れると決めたのだ。
千夏は臆することなく、同じように遥を見据えた。

「俺の妹、光をひいたのは──千夏、お前の父親だ」
「え…!?」
驚愕の事実をつきつけられ、千夏は頭が真っ白になる。
「どういうこと…?」
「俺は光を死なせた奴がどうしても許せなくて、徹底的にしらべてたんだ。その結果、有名な大学の教授を務めるお前の父親が犯人だという真実にたどりついた」
「じゃあ、私を拉致したのは…」
遥が、千夏が今まで見たことのないような憎しみに満ちた目をしている。

「身代金目的の拉致だと装い、父親だけをこの倉庫におびきだすため。それにはアイツが何よりも愛して止まない娘を利用するしかなかった。お前の父に復讐する……それが“千夏”を連れ去った本当の目的だ」
遥は偶然そこにいた千夏を連れ去ったのではなく、必然的に彼女を拉致した。
光の敵(カタキ)をとるため…そして、自分から光を奪ったひき逃げ犯に復讐をするため。

「詳しく…聞かせてください」
ぎゅっと遥の服をつかみ、千夏は言う。
まさか、あの父が人を殺していたとは信じられなかった。だが、遥は絶対に嘘はついていない。誰よりも嘘が嫌いな彼が、こんな偽りを並べる事は決してないはずだ。

「父であろうと、今まで遥さんを苦しめていたのなら許せません」
「千夏……」
遥は再び千夏を抱き寄せた。