「・・・何か言い残したいことは?」
女の声が聞こえる。

 無意識のうちにタツヤの左手に弥生は自らの手を重ねていた。
 タツヤの大きな右手がそれを包み込んだ。

___いやだ、こんな終わり方、いやだ!

「タツヤッ」
涙があふれた。どうして、どうしてこんなことに!?

「・・・別に」
3度目の同じセリフの後、耳が割れるほどの爆発音がして、生暖かい液体が弥生にふりかかった。嗚咽と吐き気が同時にこみあげ、視界がぼやけた。

 タツヤの身体がくにゃりと曲がり、血まみれのままシートに崩れる。重ねた両手も力なくふりほどかれた。


「うわぁぁぁぁぁ!」
知らずに弥生は、女に向かって叫んだ。女の顔が弥生をとらえた。

___よくも、よくもタツヤを!

 今なら、弾が切れているはずだ。やるなら今しかない。


 弥生は、シートを越えると女に飛び掛った。隙をつかれたのか小柄な女はバランスを崩して床に倒れこむ。