「良太は、私のかわいい良太は必死でいじめに耐えていた。私に言うと心配すると思ったのでしょう、私には何も言わずに、ひとりぼっちで耐えていたのよ!でも死んじゃった。殺されちゃった。だったら、だったら!母親なら許すわけにはいかないじゃない」

 誰もが動けずにいた。

 女の目からは涙がぽろぽろとこぼれ落ちてゆく。それをぬぐおうともせずに、女は微動だにせず立っていた。


「氷見インターを降ります」
運転手の山本が、ミラー越しに女に言った。

 その声に女は我に返ったように、振り向いた。左のポケットにすばやく手を入れ、紙切れのようなものを取り出すと、
「ここに行きなさい。ついたらエンジンを切りなさい」
とだけ告げ、再び弥生たちに視線を合わせた。

「おい、ここって・・・」
山本の声が聞こえたが、女は黙っている。



車は、氷見インターを出て一般道路に進んだ。