バスガイドの世界においては、「修学旅行生はオバサン連中よりタチが悪い」とされている。
 オバサン連中も、そうとうワガママで手に負えないこともあるらしいが、それ以上に一般常識が身についていない学生ほど手こずるものはないらしい。

「これは気合入れないと」

 そうつぶやき時計を確認するとすでに出発時刻に迫っていた。

「え?マズイじゃん!」

 周りのバスを見ると、少しずつ駐車場の出口へ移動を始めている。

 当たり前だが運転席を見ても誰も乗っていない。

「勘弁してよ~」

 ドアから降りて先導車両まで報告するしかない、と思ったその時、
「すまん!遅れた!」
と運転手が飛び込んできた。

 運転席に飛び乗ると、あわてて手袋をしてエンジンをかける。