「命をかけてでもつぐなってほしい事、忘れたとは言わせないわよ」

 弥生が目を上げると、女はもう笑っていなかった。

___命をかけてでも?

 その残像が、その忘れかけてた顔が、忘れたかった顔が弥生の脳裏に輪郭を増した時、鳥岡が叫んだ。
「まさか!あなたは・・・」

 その鳥岡の顔には、弥生がこれまで見たことのない驚きと苦渋に満ちた表情が浮かんでいた。

「先生、やっと分かってくださったのね」
女は、軽蔑するかのように鳥岡のそばに歩いてくると見下ろしながら言った。


「鈴木・・・鈴木良太君の・・・お母さん?」


 鳥岡の言葉に、弥生は目を見開いた。

___鈴木良太!

 それは、弥生のかつてのクラスメイトの名前だった。