車内に沈黙が流れた。

 誰もが八木がなんて答えるのかを待っていた。


「気になることがあります」
数分の沈黙の後、ついに八木が言葉を発した。

「なにかしら」

「あの、テレビとか映画で見るこういう・・・ジャックをする人たちは、たいてい何かしらの要求があって乗り込んでくるわけです。でも、あなたはそういうそぶりも見せない。警察とのやりとりで人質がひとりずつ死んでゆくのではなく、いきなり撃ったりもしています」

 なるほど、さすが委員長、と弥生は目を見開いて八木を見た。確かに、あの女はなんの要求もせず、気に入らなければ発砲している。

「ふふ、いいところに気づいたわね」