車内には血の匂いが重く漂い、声を押し殺して泣く生徒の声が支配している。

___あの拳銃さえ奪えたら

 女が右手で操る拳銃を盗み見る。

 拳銃さえなければ、あんな女を捕まえるなんて私にだってできるはずだ。そう思うが、自分にそんな勇気がないことも知っている。


「・・・あれ?」
思わず言葉が口からこぼれてしまったが、女がそれに気づいた様子もなかった。

 弥生はシートに前倒しになってかがむと、横のタツヤに小声で言った。
「ねぇ、あの拳銃ってさ、弾がいくつはいる?」

 先ほどの教訓からなのかタツヤはこちらを見ようともせず、自分の左太ももに「6」と指でなぞって示した。

「6・・・」