佳織の指定された車は5号車だった。

 今回は5台のバスで、愛知から岐阜にある下呂温泉をめざす。

「高校生で温泉とは、またシブいこと」
そう言いながら、佳織は車体に傷などがないか確認してまわった。

 先輩に教えてもらったとおり、指差し確認をしてゆくが車体はまるで新車のように、秋の枯れ葉が舞い散る駐車場の中、光り輝いているように見えた。

「おはよう」
先輩バスガイドたちが声をかけてゆく。

「おはようございます!今日はよろしくお願いします」
律儀に頭を下げてあいさつをすると、
「デビューがんばってね」
「困ったら電話してね」
など声をかけていってくれる。

 それらの声に勇気づけられるようにまだ着慣れない制服のリボンをもう一度結びなおすと、佳織は5号車の中へ足を踏み入れた。