今田佳織の命が消えてゆくのを、佐藤弥生はぼんやりと眺めていた。

 周りの生徒は悲鳴をあげたり鳴き声を上げている中、佐藤弥生の脳裏には「うんざり」という言葉しかうかんでいなかった。

 大体、修学旅行なんて行きたくなかったのだ。

 当然のように隣にいるタツヤもバックレるとばかり思っていたが、精神年齢の低い彼は間際になって、
「やっぱ行く」
なんて言い出したものだから、こうやってバスに揺られているわけだ。

 バカな同級生と同じ空間にいるだけでも迷惑なのに、その上バスジャック。

「ほんと、うんざり」
誰にも聞こえないようにつぶやくと、佐藤弥生はふたたび今田佳織を見つめた。

 もう、ピクリとも動かない。