「あの・・・質問があるんですが」

「なに?」
クラシックに身体をゆらしていた女は、それを中断されたことにイラっとしたような言い方をした。

「どうして、バスジャックをしたんですか?」

 携帯が音を拾うよう、少し大きめの声で佳織は尋ねた。

「ガイドさん、お名前は?」

「・・・今田です」

 女は佳織の方を向くと、
「今田さん、お仕事の邪魔をして本当に申し訳ないと思ってるわ」
と、そうは思ってないだろうという心のない言い方をした。

 ムッとした表情を出さないようにしながら、佳織は女を見つめた。

 生徒たちはふたりの会話に耳をすませているようだった。