「あんたさ・・・自分のはじめて担当するお客の学校名とか場所とかくらい覚えときなさいよ」

「さっきまで覚えてたんだけど、緊張で頭の引き出しに全部鍵がかかっちゃったみたいなの」
泣きそうな顔で訴える佳織の頭を淳子はなでると、
「これ以上バカになったらどうするのよ~」
とからかってきた。

「もう!」
と言いながらも、やっと佳織の顔に笑顔がもどった。


 そうだ、なるようになる。
 とにかく、笑顔でがんばるしかないのだ。


「じゃ、行ってくるね」
と言ってロッカーを出ようとすると、後ろから、
「その調子!がんば!」
と声が聞こえた。

「ありがと!おみやげ買ってくるね~」


 佳織の運命を変える1日がはじまろうとしていた。