黙っていたほうが身のためなのだろうが、このニュースが流れた時、
「バスガイドはおびえて何もしてくれなかった」
などと言われては困ってしまう。

「震えてる」

「え?」

 女は声を出して笑うと、
「声が震えてるわよ。無理しなくていいわ。あんたもその辺の座席に座ってなさい」
と空いている座席をあごで指した。

 携帯がある操作パネルまでは少し距離があった。

 そこまで行って携帯を取ってから席につくのは、いくらなんでも不自然だろう・・・。

 あきらめて席へ向かおうとした時、女が言った。
「そうだ、何か音楽でも流してちょうだい。この子たちの泣き声聞いてるとイライラしちゃうのよね」

「音楽・・・ですか?」