車内は、重い空気が漂っていた。カーテンをすべて閉められた車内は薄暗く、前方からの光がスポットライトのように座席に陰影を作り出している。

　生徒達は声を押し殺して泣く者や、耳をふさいで目を閉じている者など恐怖に震えているようだった。

　先ほど写真を頼んだカップルだけが、にくらしそうな目で女をにらみつけていた。

「どう、すっきりした？大丈夫？」

　まるで車酔いした友だちを心配するような女の言い方に、佳織は嫌悪感を抱いたが、なんとかそれを出さずにうなずいた。


　鳥岡を見ると、自分でハンカチを太ももに縛りつけて止血したらしく、顔色は悪いが気丈な顔つきをしていた。出血もそうひどくはないらしい。

　自然な形で女の横に並ぶと、佳織は、
「これからどうするんですか？」
と尋ねた。