岩崎は目を見開いたまま死んでいた。胸を貫通したであろう玉が、バスの揺れで右へ左へと転がっている。

「先生、あなたなんて名前？」

　いまだショック状態から抜けきれていない鳥岡に女が尋ねる。

「・・・鳥岡です」

「そう、鳥岡先生。私、思うんだけど、生徒の尻拭いは先生がやるものよね」
女はそう言うと、鳥岡に銃口を合わせた。

　悲鳴がいたるところから上がったが、それを無視して女は引き金をひいた。

　再びの破裂音とともに、鳥岡が短い悲鳴とともに通路に倒れる。近くにいた生徒を中心に絶叫のような声がこだました。

「安心なさい、足を撃っただけ。でも、早めに手当てしないと出血多量で死ぬかもね」

　まるで他人事のように女は笑った。

　佳織が覗き込むと、鳥岡は左ふくらはぎを撃たれたらしく、血がしたたらせながら顔をゆがめて苦しそうな表情をしている。