「何？」
途中まで戻ってきていた女の足が止まり、生徒を見やる。

「あんた、何なのよ！突然バスに乗ってきて席を替えたり携帯を没収したり。ちゃんと説明しなさいよ！」

　その声に、後ろの方の女子生徒が数人、
「そうだそうだ！」
「説明しろ～」
と同調した。

「・・・あなた名前は？」

「なによ、関係ないじゃない！」

「先生、彼女の名前を教えてください」
女は腕を組むと、右の前列に座っている鳥岡に尋ねた。

　鳥岡は、厳しい目つきで女を見返す。
　しばらく両者は見つめあっていたが、先に視線をはずしたのは鳥岡だった。

「・・・岩崎、です」