すると、鳥岡は立ち止まって佳織を見つめたあと、
「ありがとう。なんかうれしい」
と微笑んだ。

 同じように佳織も微笑むと、バスの入り口に立ち鳥岡を先に行かせた。

 4号車のバスが出発するらしく、佳織の横を進んでゆく。運転手に手を上げてみせ、佳織もバスへのりこんだ。

 バスの中では八木が点呼をはじめていた。

 後ろからのぞきこむように佳織も生徒の数を数えてゆく。

 大丈夫、全員いるようだ。

 山本にドアを閉める合図を出そうと振り返ったそのとき、視界の端に何か違和感を覚えた。


 ドアのところに誰かが立っているのだ。

 それは50歳くらいの女性だった。サングラスをしていて顔はよく分からないが、パーマをかけたスタイルの良い女性だった。
 知らない顔だった。