舌打ちをした後、
「おい」
と言いながら彼が追いかけてゆく。

 それを見送った後、佳織は一度車内に戻り山本の帰りを待った。

 トイレは交代で行くことになっているからだ。

 しばらく待っていたが帰ってくる気配がないので、台本をまた読みふける。ここから高山までは1時間と少し。ガイドはここからが本番で、いろいろ説明しなくてはならない箇所が多い。

「遅いな・・・」

 少しずつ生徒たちがバスへ戻ってきている。時間差で到着しているので、1号車はゆっくりと本線へ戻っていってる。

 半数以上の生徒が戻ってきており、ここは離れても大丈夫だろうと佳織もトイレへ向かった。

 トイレの入り口で山本とようやく会う。

「すまんなー。めっちゃ腹痛いねん」
あどけなく笑う山本だが。すでに出発時刻が迫ってきている。佳織は、うなずくと早足でトイレの中へ急いだ。