「さ、おじいさん行きましょうね」
やさしく老婦人が言い、私に会釈をして去ってゆく。

 その後ろ姿を見送りながら、私は自分が泣いていることに気づいた。



 これでよかったのか、それは誰にも分からない。


 大きく深呼吸をすると私は立ち上がった。


 ボールを追う子どもを見ながら、私は痛む足をひきずりながら駅へと歩き出す。



 季節はめぐる。秋から冬へ、そして春へと。


 こぼれ落ちる涙も、やがて乾くだろう。

  













                 完