生徒たちへの怒りが育つ中、私は初七日にあたる日に良太の家に忍び込みノートを盗んだ。コピーをとるとすぐに返しに行ったが、すでに両親は家に戻ってきており、部屋まで行くことができずポストに入れておいた。

 まさか私が盗んだとは思っていないだろうが、心配だった。

「さぁ、そろそろ行こうかしらね」
母は老婦人の話し方になって立ち上がった。

「うん・・・。どうか気をつけてね」
私には気のきいたセリフが浮かばない。ただ黙って見つめるしかできなかった。

 母は父を介助して立たせると、私の方はもう見ずに言った。

「私たちは許されないことをした。神でもないのに人を殺めてしまった。その罪を背負ってこれから生きてゆきましょう。でも、後悔はしない」

「うん」

 私もうなずく。