「分かってるわよ。でも、自分の子を撃つなんて・・・本当につらかったんだから」

「私がお願いしたことじゃない。重症で助かってはじめてこのシナリオは真実味を増すんだから。ごめんね、大丈夫だから泣かないで」

 母は、ウンウンと何度もうなずいた。

「ねぇ、その格好でしばらく過ごすの?」
私は思っていた疑問を投げかけた。

「そう。そのために引っ越しまでしたわけだし、近所の人は私たちを地味な老夫婦としか見ていないわよ。これでいつ警察が来ても大丈夫、絶対に犯人の似顔絵と同じだとは思われないわ」

「しばらく会いにはいけないわよ。数年の辛抱かな」
私は、なんてことないという言い方に聞こえるように言った。

「大丈夫、たった数年じゃない。半年に一度ここで会えればいいわ」
犯行後は、ここで会う約束だった。念には念をいれたかったのだ。