「大丈夫」
そう言いながら、私は右手首の包帯を見せた。
「入院してすぐに手首を切ったの。もちろん本気ではないわよ。傷ついた被害者を演じたかったの」
実際傷はほとんど治っていたが、同情を集めるにはしばらく巻いていたかった。

「なんてことを・・・」
ふたりは顔色を変えて驚いた顔をした。

「大丈夫だって、力が入らないように左手で切ったんだもん。そうすることで容疑に入らないようにしたってわけ」

「おまえって子は」
父は安心したような親の顔になった。

「それより、撃たれた足がまだ痛いんだけど」
すねたような顔を見せると、母親は急に顔をゆがませた。一瞬笑ったのかと思ったが、すぐにスローモーションで泣き顔になると声を出して涙を流した。

「ちょっ・・・冗談だって」