母は鼻をすすると、
「中沢さんはあなたが私たちの顔を鈴木良太の両親だ、と言ったことに疑問をもっていたのね。はじめは同意したけれど違和感を感じた。そして、葬式で見た顔ではないことに気づいた」
とさみしげに言った。

「私のミスだわ」
そう、あのときは私が余計なことを言ってしまったのだ。当初は、犯人に言われるまで分からなかったという筋書きだったのに、なぜか私が口走ってしまったのだ。もし、それがなければ中沢も余計な推測をしなかったかと思うと深く悔いが残る。

「八木君、だっけ？とても頭が切れる子ね」
母親がやさしい口調で言った。

「私もあれほどだとは思わなかった。お母さんたちに推理を聞かせるときだけじゃなく、その後も警察の捜査に協力までしているようだし」

「大丈夫か？疑われないか？」