「隣よろしいでしょうか?」
声に顔を向けると、白髪の老婦人が杖をついたおじいさんを連れて立っていた。

「ああ、はい。どうぞ」
そう言いながらベンチの左端へ場所を移した。

「おじいさん、さあ座らせてもらいましょう」
老婦人が声をかけると、おじいさんがニコニコと、
「すみませんねぇ」
としゃがれた声を出した。

「今日はいい天気ですねぇ」
老婦人の声がした。おじいさんに言っているのかと思ったらこちらに顔を向けて微笑んでいたので、あわてて私は、
「はい、そうですね。あたかかいですね」
と同意した。

 老婦人がカバンから水筒を出してコップに注ぐと、おじいさんに手渡した。