「おい、おちつけ」
父親がなだめて肩をおさえるのも構わず、母親は咆哮した。
「みんな言ってるわ！則子が犯人じゃないかって！テレビも新聞も、みんな則子を疑ってる。血痕がないからって何なのよ！それが証拠になるって言うの！？」
母親は両手で顔を覆うと号泣した。

「・・・すみせん、失礼な態度を」
父親は冷静らしく、非礼を詫びた。しかし、その顔にも母親同様ひどく疲れが浮かんでいた。

「気になさらないでください」
植園は眼鏡をかけ直しながら、何でもないような口調で言った。

　父親は、母親にティッシュを渡すと、
「実際、どうなのでしょう。則子が犯罪に加担している可能性もあるのでしょうか？」
と尋ねた。

「あなた！何てことをっ」
泣きじゃくりながら非難する母親をかわしながら、
「お願いします。教えてください」
と懇願した。