会釈をして、植園は部屋の中を見渡した。

 狭い部屋にはベッドがふたつと、小さなテーブルがあるだけだった。

 少し迷ってから、植園はベッドのひとつに言われないうちから腰をおろした。吉沢がその隣に座る。
「今日は突然すみません。ご協力感謝します」

 戸惑っている両親を尻目に、植園は続けた。
「下川則子さんについて、今一度お話をうかがいたくてお邪魔しました。どうぞ」
目の前のベッドを指差すと、ふたりはそこにオロオロと腰を落とした。こうして自分のペースに持ち込むのが植園の得意技だった。

「さて、下川則子さんの行方は未だ分かっておりません。もちろん警察は全力をあげて捜査しております」

「それは容疑者として?」
母親が鋭い視線を投げかけた。その目は強く、そして疲れが見えた。おそらくろくに眠れていないのだろう。

「それは何とも言えません。ただ、娘さん・・・則子さんの血痕が・・・」

「血痕がないからって何なのよ!」
母親が爆発したように立ち上がって叫んだ。