ホテルの廊下はいつも薄暗く感じる。直線に伸びた廊下は絨毯で覆われていて、無機質に並んだドアに圧迫感を覚える。どんなに照明を強くしていても、植園にとっては好きではない暗いイメージの場所だった。

 ドアを吉沢がノックすると、しばらくして中から声がしたかと思うとドアは開けられた。

「突然お邪魔してすみません」
吉沢がそう言い終わらないうちに、女性が緊迫した声で吉沢に詰め寄った。
「則子は!?則子が見つかったんですかっ」

 下川則子の母親だった。

「いえ、まだです。今日は今一度お話を伺いにきました」
吉沢の声に母親は文字通り崩れた。

 植園が抱き起こそうとすると、
「結構です!」
と強い口調でそれを拒否すると、母親は立ち上がり、
「どうぞ」
とそっけなくふたりを中に招いた。

 中に入ると、中腰の父親がこちらを見ていた。